インタビュー
CCoEリーダーが語る、大手金融機関初のオンライン取引システムAWS移行プロジェクト成功の裏側
2024年4月、SBI証券が国内の大手金融機関として初めて、オンライン取引システムのAWSへの移行を成功させた旨を発表しました。
1日あたりの国内株式取引額が最大2兆円にものぼると言われている大規模システムのAWS移行という超重要ミッションを遂行していったのが、同社のクラウドプロフェッショナルが集まるCCoE(Cloud Center of Excellence)チームです。
今回は、そんな高い技術力を有する同チームを率いるA.Iさんにお話を伺いました。
金融系SEからインフラエンジニアを経てCCoEのチームリーダーを務めているA.Iさんは、移行プロジェクトにおいて具体的にどのような技術的ハードルに直面し、またどのような成果ややりがいを感じているのか、詳しく伺いました。
プロフィール
A.I.
SBIシンプレクス・ソリューションズ株式会社
アーキテクト推進部 ジェネラルマネジャー
「なんでも屋」として、色々な形でSBIグループのシステム開発案件に参画
まずは、これまでのご経歴について教えてください。
A.I.:経歴としては結構色々とあるのですが、まずは20年以上前にある証券会社でSEをやり始めました。そこから別の金融系システム会社に転職し、PMとして各案件に入るようになったのですが、そこでSBI証券の仕事を請け負うようになります。そのうち、所属会社がSBI子会社との合併を繰り返すこととなるわけですが、私自身は途中で一旦会社を辞めて独立し、そこでまたSBI証券と仕事をしていました。その後、新たなシステム子会社であるSBI BITSが設立されるということで入社を打診され、そのままそちらにジョインすることになります。2022年にはそこからSBI証券へと転籍し、現在はSBIシンプレクス・ソリューションズへと出向し、アーキテクト推進部でCCoEのリーダーをしています。
すごい、一度聞いただけでは覚えきれないくらいの豊かなご経歴ですね! ご担当されていた業務としてはどんな内容になるのでしょうか?
A.I.:もはや「なんでも屋」ですね。プレイングマネージャーみたいなもので、コーディングもすればPMもするみたいな形で、その時々で必要なロール、求められているロールに対応していくようなスタイルです。その中でも、特に得意な領域はインフラになります。
現在はCCoEのリーダーをされているとのことですが、こちらはどんな業務内容なのかを教えてください。
A.I.:一言で言うと、SBI証券でのクラウド利用の推進をしています。今までオンプレミスを利用していた環境でAWSを利用するにあたって問題なく移行ができるように、例えば共通基盤を作成したり、構成のレビューを行ったり、ソースコード(CDK)のレビューをしたりしています。
様々な課題を乗り越えて実現した、オンプレミスからAWSへの移行
国内大手金融機関として初めてAWSへの移行を成功させたということで、ニュースでも報じられているかと思いますが、改めてプロジェクトの概要を教えてください。
A.I.:「Genesis(ジェネシス)」と呼ばれるSBI証券内の国内株のミドルシステム(余力管理・発注等)とWebフロントシステムを、オンプレミスからAWSへと移行するプロジェクトです。併せて「店群」と呼ばれる、シャーディング(負荷分散)を目的にお客様の口座をグループ化して分けた単位の追加・増強と構成変更を行っています。プロジェクト期間としては2022年11月から2024年3月までで、出来るだけプログラムに手を入れずAWSへ移設する必要があったため、影響を出さずに構成を作ることが求められていました。
プロジェクトを進めるにあたって大変だったこと/難しかったことを教えてください。
A.I.:もともとSBI証券ではAWSを使っていて、システムも動いているという状態ではあったのですが、枝葉のシステムしか動いていなかったこともあり、影響範囲が分からないことが一つありました。また、本丸のシステムがこれまでオンプレミスだったこともあり、AWSの知識・ノウハウを持っている人も少ない状況でした。ですからベンダーの方々と細かくやりとりをしつつ、CDK(AWS Cloud Development Kit)のレビューで都度課題を見つけて潰すようなアプローチで進めていったので、どうしても時間がかかったことが大変でした。もちろん、修正方法やクラウドを効率よく利用する方法を説明し、理解してもらいながら進めてはいきましたね。
対障害性・拡張性の面で特に大きなメリットを感じている
プロジェクトの成果として感じていることを教えてください。
A.I.:大小色々とありますが、対障害性・拡張性の面で特に大きなメリットを感じています。トラフィック数に応じたサーバーリソースの柔軟な増減はもちろん、たとえば今まで店群を増やすとなると1年以上かかっていたのですが、AWS化によって今後半分以下のスピードでできることが期待されています。
プロジェクトを通じて身についたスキルや技術的知見等についても教えてください。
A.I.:AWS FIS(Fault Injection Simulator Service)という耐障害性テストツールがあるのですが、それを利用した疑似的な障害の注入による障害テストの知識・ノウハウが溜まったことは大きいかなと思います。
SBIグループならではの強みを感じるシーンはありましたか?
A.I.:先ほどもお伝えしたとおり、AWS自体は今回が初めてではなく、これまでもCCoEを中心として周辺システムの環境をクラウド化してきました。いくつかの細かい段階を踏んでから今回のプロジェクトに進んでいるわけで、そこでの知見が今回の成功につながっているのだと思います。そういう意味で、SBIグループの「やると決めたらとことんやる」姿勢が、大きな追い風になっていると感じています。
クラウドの最新技術にいち早く触れて吸収できる環境が最高に楽しい
AWS移管の第一弾を終えてのご自身のやりがいや達成感はいかがでしょう?
A.I.:投資家の方々の大事なお金を預かっているシステムだからこそ、問題を起こすわけにはいかないと考えています。大きな問題がなく移設が完了したことについては、このプロジェクトに参加した人たち皆の協力なくしては成し遂げられなかったと思っております。
SBIグループでクラウドをやっていて、ワクワクすることも教えてください。
A.I.:AWSは進化が早く、いろいろな技術・サービスが次々と出てきます。それらにいち早く触れて吸収できる環境というのが、個人的には一番ワクワクするポイントですね。
これからの目標を教えてください。
A.I.:今は東京リージョンでサービスが起動していますが、マルチリージョンでの冗長性を担保したいと考えています。あと、まだまだオンプレミスのシステムはたくさんあるので、一部を除いた全ての基盤のAWS移設を進めていきたいと思っています。
今後、どんな方と一緒に働きたいですか?
A.I.:自分のスキルアップを楽しめ、チャレンジしていく人ですね。今の時点でスキルがなくとも、やる気がある方ならば大歓迎です。
最後に、応募を検討している方にメッセージをお願いします。
A.I.:金融システムなので高いセキュリティが求められるのですが、その中でどこまで効率化を高めることができるか、お客様に価値を届けることができるかが、私たちに課せられたミッションです。当社はチャレンジングな会社なので、色々なことにチャレンジできると感じています。その中で自分の価値を高めていきたいと思う方は、是非一緒に働きましょう!